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本の詳細
教室で読みたい本〔高学年向き〕

ホイッパーウィル川の伝説

キャシー・アッペルトアリスン・マギー 著/吉井知代子 訳 
ホイッパーウィル川の伝説
  定価(本体1,400円+税)
判型: 四六判
ページ数: 240頁
ISBN: 978-4-7515-2862-4
NDC: 933
初版: 2016年10月
対象: 小学校高学年
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第63回青少年読書感想文全国コンクール課題図書(中学校の部)に
選定されました

↓このページの下に毎日新聞社説記事と内閣総理大臣賞受賞作品を
掲載させていただきました。

姉妹の絆、そしてピュアな愛情が、ふしぎなキツネの魂と響きあう!
ヴァーモントの神秘の森でくりひろげられるスピリチュアル・ファンタジーです。
11歳のジュールズは、石に惹かれる「石ガール」。
一方、姉のシルヴィは、走るのが大好きな学校一のランナー。
性格も体型も対照的な二人は、仲のよい姉妹でした。
ある雪の朝、ジュールズの目の前から森へと走り出したシルヴィは、
そのまま姿を消してしまいます。不穏な足跡だけをのこして……。
そこからはじまる父と娘のつらい日々、そしてかなしみを乗り越えるまでが描かれていくのですが、そこにもうひとつ、ふしぎな力をもつキツネ「セナ」の幻想的な物語が編みこまれ、やがてそれがひとつに……そして、シルヴィの秘密が明かされるクライマックスへとつながっていきます。
このユニークな構造の物語は、お互いを「ソウルシスター」と呼びあう友人である二人の著者が、4年の歳月をかけてつむいだ共作です。

2018年2月9日毎日新聞朝刊社説

(2018年2月9日毎日新聞朝刊社説)

第63回青少年読書感想文全国コンクール
内閣総理大臣賞受賞作品

つながりの中で今を生きる

秋田県横手市立横手北中学校 三年 伊藤 紬

 ひんやりとした感覚が、胸の奥に広がってくる。母親と姉のシルヴィを失ったジュールズ。ジュールズの父親のチェス。シルヴィという親友を失ったサム。そして、戦場で相棒を失ったエルク。悲しみは、川波のように時に静かに、時に激しく、残された者の心に打ち寄せる。重苦しい気持ちで読み進む私の心も、暗く冷たくなっていった。
 「シルヴィ以後」の生活は、ジュールズには辛く悲しい日々だった。シルヴィが、奈落の淵に行くのを止められなかったことで、自分を責め続けるジュールズ。胸を裂くような後悔と喪失感が、私の心にも痛いほどに突き刺さる。私は、ジュールズの心が少しでも癒されることを、祈ることしかできなかった。
 そんなジュールズを救ったのは、子ギツネのセナだった。セナは、シルヴィの魂を宿して生まれた特別なキツネとなって、ジュールズの前に現れた。そして、ジュールズを見守り、悲しみを和らげ、最後には身代わりとなってジュールズの命を助けた。深い悲しみの淵からジュールズを救ったのは、最愛の妹を守ろうとするシルヴィの強い想いだったのだ。
 最初私は、シルヴィを身勝手だと思っていた。理由も言わずに、速く走ることに夢中になり、妹を置きざりにして命を落としたわがままな姉だと。シルヴィの行動によって、ジュールズは、心に大きな傷を抱え、周りの全ての人が悲しむことになったからだ。
 しかし、それは違っていた。母親を目の前で亡くした時、シルヴィは、「もっと速く走っていれば母を助けられた」と、自分を責め、もう二度と家族を悲しませないと誓った。シルヴィが走り続けたのは、愛する妹や父を守るためだった。シルヴィはどんなに苦しんだことだろう。けれどもシルヴィは、その苦しさを誰にも明かさず、家族のために全力で走り続けた。シルヴィの固い決意と家族を思う優しさに、私は強く心を打たれた。
 探し続けた石の洞窟の中で、ジュールズは、シルヴィが残した願い石を見つけ、シルヴィが走り続けた理由と自分への深い愛情を、初めて知った。シルヴィからの愛は、ジュールズにとって何よりも心を癒し、生きる力を与えてくれるものだった。ジュールズはこれから、思い出の中に生きるシルヴィと、心を寄せ合って、前向きに自分らしく生きていくことだろう。ジュールズの未来に、柔らかな光が差し込むのを感じ、冷たかった私の心も、じんわりとあたたかくなった。
 奈落の淵に投げ入れると、願いが叶うという願い石。その石に託された燃えるように熱い$リなる願いには、大切な人への愛があふれていた。それぞれがお互いを思いやり、愛を与え合い、悲しみを分かち合いながら生きている。命は、そんなあたたかいつながりの中にあること。そして命は、大切な人と重なり合っていることを、ジュールズたちは教えてくれた。
 それは、私も同じことだ。両親、四歳下の妹、祖父母、友達。私の命も、たくさんの人と重なり合い、つながっている。今まで考えることもなく生きてきたが、つながりの中でたくさんの愛に包まれて同じ時間を過ごすことが、どんなに幸せで素晴らしいことかを、知ることができた。そして、私が今、幸せに生きていることが、私とつながる人の喜びになり、支えになっていることにも気付いた。だとすれば、私は、決して命を粗末にしてはいけないし、周りの人を悲しませるような生き方をしてはいけないと、深く胸に刻んだ。
 本を読み終えて、静かに目を閉じた私の心に浮かんだのは、「今」を精一杯生きるという言葉だった。私は、これまで自分の死を意識することなく生きてきた。命に限りがあることは知っていても、だからと言って具体的に何か行動をしているわけでもない。そんな私には、十二歳という若さで命を落としたシルヴィの死は、強い衝撃だった。命がいつ尽きるかは、誰にも分からない。今日と同じように明日があることは、約束されていないことを思い知らされた。けれどもシルヴィは、短い一生を全速力で駆け抜け、残された人たちに、一つの命の重さと、生きることの尊さを教えてくれた。そんなシルヴィの生き方から、与えられた「今」という大切な時間を、精一杯生きることが、私たちにとってとても大切なことだと学んだ。
 私はどうだろう。私は、全力で「今」を生きているだろうか。時間を無駄に使い、やるべきことを先延ばしにすること。失敗するとくよくよ悩み、次の挑戦を諦めること。振り返ると、力を出し切ることなく日々を過ごしている自分の弱さが、浮き彫りになる。
 私も、シルヴィのように「今」を精一杯生きてみよう。二度と来ないかけがえのない日々を、後悔で終わりたくはない。あたたかいつながりの中で生きている幸せを忘れず、今自分がやるべきことや、やりたいことに、自分なりの精一杯の力で取り組んでいきたい。

キャシー・アッペルト&アリスン・マギー・著 吉井知代子・訳
「ホイッパーウィル川の伝説」(あすなろ書房)

【書評】    
メディア名 日付 コメントなど
NHK総合テレビ 2018年3月10日 「こころフォトスペシャル 子どもたちと歩んだ7年」にて紹介されました。“母親が津波で流される直前まで一緒だった8歳の少年は、その後、母のことを話すことも涙を流すことも一切ありませんでした。
中学生になった少年は、本書を読んだ後、読書感想文の形で心のうちを初めて語りました。”
読書感想文全文や、父親のメッセージはNHK「こころフォト」のページに掲載しています。
毎日新聞 2017年7月6日 「本はともだち」で紹介されました。


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